食後血糖値とは?
糖尿病という病気は、血液中のブドウ糖の量が増えてしまっている状態を指します。
これを一般的には、血糖値の高い状態と言います。
けれども、ブドウ糖というのは、食物から摂取するものであり、食事の前や後では血糖値も大きく変わると言えます。
ですので、血糖値を糖尿病の診断に用いる場合、「いつ」測定するのかによっても、それぞれ異なる基準値が設定されているのです。
その「いつ」というタイミングは、以下の3つに分けることができます。
- 空腹時血糖値
- 食後血糖値(食事を始めてから2時間後に測定)
- 随時血糖値
このように、何も食べていない状態と、食事をした後、それから食事の有無に関わらず、随時測定するというものがあります。
ちなみに、食後血糖値とは別名、食後2時間血糖値とも呼ばれ、食事を始めてから2時間後に血糖値の測定を行う検査です。
誤解されやすいのですが、食事が終了してから2時間後ではありませんので、ご注意ください。
健常者の食後血糖値について
健常者の体は、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が活発で、インスリンの分泌も正常に行われます。
ですから、食事によってブドウ糖を摂取しても、速やかに血管内から組織内へとブドウ糖を移動させてくれます。
と言っても、食事を始めてから45~60分程度は、血液中にブドウ糖が蓄積することとなります。
いくら元気なインスリンと言えども、瞬時にブドウ糖を取り込ませることはできないのです。
そういったこともあって、食後血糖値は食事を始めてから2時間後に行うのです。
そして、気になる健常者の食後血糖値については以下の通りです。
- 食後2時間血糖値 140mg/dl未満 → 優
- 食後2時間血糖値 180mg/dl未満 → 良
2つの値を提示しましたが、どちらも健常者に含まれます。
食後2時間血糖値が140mg/dl未満というのは理想的な値であるため「優」という評価がつきます。
一方、食後2時間血糖値が180mg/dl未満というのは、糖尿病になるリスクが低く、そこそこ健康と言えるため「良」という評価がつきます。
ただ、どちらにしても、膵臓のインスリン分泌能およびインスリン受容体の双方が至って健康であることを意味しています。
糖尿病予備軍の食後血糖値について
続いて、糖尿病ではないけれど、今後、糖尿病を発病する可能性が高い人の食後血糖値について説明します。
こうした状態の人を「糖尿病予備軍」とか「境界型」と呼ぶことがあります。
この糖尿病予備軍の食後血糖値については以下の通りです。
食後2時間血糖値 140~199mg/dl
この値だと、先ほどの健常者とそれほど変わらないような印象を受けますよね。
けれども、数値を少し丁寧に見てみましょう。
上は180mg/dlを優に越えていますので、ほぼ糖尿病を発症しているとも言えます。
下は140mg/dlですので、ほぼ健康な状態です。
ですので、患者さんの状態によっては、糖尿病ともそうでないとも言える、とても微妙な状態なのです。
こうして基準値を丁寧に見てみると「境界型」とも呼ばれている所以が分かる気がしますよね。
ちなみに、この「境界型」と呼ばれる糖尿病予備軍は、以下のように、細かく2つに分けることができます。
- 空腹時血糖値が高いタイプ
- ブドウ負荷試験後の血糖値が高いタイプ
この2つのタイプは、どちらも糖尿病予備軍であることに変わりはありません。
けれども、どちらかというと、ブドウ負荷試験後の血糖値が高いタイプの方が、危険性が高いと言えます。
なぜなら、このタイプの方が、血管へのダメージが蓄積しやすく、動脈硬化を起こしやすいからです。
ですので、糖尿病予備軍の人は、自分がどちらのタイプに当てはまっているかを検査によって知っておくことも大切かと思います。
糖尿病の食後血糖値について
糖尿病を発症すると、インスリンが分泌されなかったり、作用しにくくなったりすることで、血糖値が下がりにくくなります。
具体的には、食後血糖値は以下の値を示します。
食後2時間血糖値 200mg/dl以上
糖尿病の診療において、食後2時間の血糖値というのは140mg/dlを超えてはならないという、ひとつの基準が設けられています。
糖尿病患者は、上記の数字を見てもわかる通り、その値を大きく逸脱しているのです。
そうなると、血管へのダメージやその他の臓器への悪影響は甚大なものになってきます。
それだけに、糖尿病を発症した人は、次のような深刻な病気を合併してしまうのです。
- 糖尿病性網膜症
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性神経障害
これらの病気は、視力を失わせたり、時に命に関わるような病態を引き起こすこともあり得ると言えます。
自分の食後血糖値を知ることから始めよう
このように、病院へ行けば、今自分がどのような状態にあるのかを詳しく知ることができます。
特に、食後血糖値というのは、糖尿病の診断には有効な材料となりますので、血糖値が気になる方は、一度検査してみることをお勧めします。
仮に、境界型であったとしても、今後、どのような生活を送れば、糖尿病の発症を免れることができるかを考えることができます。
また、医師から助言がもらえるため、有効な予防策を講じることも可能でしょう。
ですので、まずは自分自身の食後血糖値を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。