糖尿病診断における検査について
糖尿病を発症しているかどうかを診断するには、血液中のブドウ糖の値を調べなければなりません。
その方法としては、以下のような検査があります。
- 空腹時血糖値
- 食後血糖値(75g経口ブドウ糖負荷試験)
- 随時血糖値
- HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)検査
最後のHbA1c検査を除いて、基本的には全て、血液中のブドウ糖の値自体を調べるものとなっています。
ですので、1~3の検査は、いつ血糖値を測定するかの違いがあるだけで、検査方法や検査目的は同じであると言えます。
それでは、各検査における血糖値の基準値と見ていきましょう。
空腹時血糖値の基準について
空腹時血糖値とは、文字通り、空腹の状態で血液検査を行います。
具体的には、朝早い時間に、朝食を抜いた状態で、血糖値の測定を行います。
この空腹時血糖値の基準値は次の通りです。
空腹時血糖値 126mg/dL以上 → 糖尿病
血糖値が126mg/dLというと、とても低く思えますが、これが空腹時であることを忘れてはいけません。
つまり、最後に食事をしてから、数時間経った後でもこの値を維持しているということは、食後には、さらなる値の上昇が見込まれるのです。
あるいは、空腹時でさえ血糖値が126mg/dL以上であるということは、血管に対するダメージが絶えず起きていると考えることもできます。
食後血糖値の基準について
食後血糖値の検査は、別名「75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)」と呼ばれることもあります。
これは、検査に75gの経口ブドウ糖を用いるため、このような名前がついています。
実際の検査では、複数回の採血を伴います。
1回目は通常の空腹時血糖と同じように、絶食した状態で血液を採取します。
絶食の時間は、10時間以上と決められています。
そこで一度、血糖値を測定しておきます。
続いて、検査名にもある「経口ブドウ糖」を摂取して血液を採取します。
この経口ブドウ糖とは、75gのブドウ糖を水に溶解させたものなので、血糖値の上昇値を正確に測ることができます。
採血を行うのは、この経口ブドウ糖を摂取してから30分後、1時間後、2時間後です。
こうして複数回の採血を行うことで、インスリンの働きを経時的に観察することができるのです。
75g経口ブドウ糖負荷試験の基準値は次の通りです。
75gOGTT 2時間値 200mg/dL以上 → 糖尿病
最終的には、経口ブドウ糖を摂取した2時間後の値を参考にします。
ただし、この検査は高血糖の患者さんにはリスクが大きいと言えます。
なぜなら、血糖値を直接的に上昇させるブドウ糖を空腹時に摂取するからです。
ですので、予め高血糖であると分かっている場合は、この検査はお勧めできません。
随時血糖値の基準について
随時血糖値は、検査を行う上で、特別な制約はありません。
ですので、絶食をする必要もなければ、検査時にブドウ糖を摂取することもありません。
検査は、検査前の食事の有無も関係なく、採血のみで行われます。
そんな随時血糖値の基準は、次の通りです。
随時血糖値 200mg/dL以上 → 糖尿病
随時血糖値は、検査の制約がほとんどないため「本当に性格な値が測れるの?」と不安になる方も多いかと思います。
けれども、食後であろうと、食前であろうと、血糖値が200mg/dL以上であるということは、明らかに健康ではありません。
ですので、糖尿病であるという診断を下す上で、きちんとした根拠となり得るのです。
HbA1cの値を測定する理由
最後は、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)検査についてです。
この検査は、とても分かりづらい名前が付いていますが、シンプルに言い換えると、次のようになります。
まず、糖尿病になると、ブドウ糖が組織内に取り込まれなくなります。
すると、血液内に浮遊しているブドウ糖の量が増えていきます。
人の体は、これを余分なブドウ糖であると判断して、血液中のタンパク質と結合させるのです。
そのタンパク質が、赤血球中のヘモグロビンです。
ちなみに、ブドウ糖とヘモグロビンが結合したものをHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)と言います。
ですので、このHbA1cの値が高ければ高いほど、余分なブドウ糖が血液を浮遊しているということを意味しています。
つまり、糖尿病であるかどうかを判断する材料となるのです。
このHbA1cの基準値は次の通りとなっています。
HbA1cの値が6.5% 以上 → 糖尿病
ちなみに、HbA1cの正常値は6.2未満となっています。
HbA1cの基準について
では、なぜわざわざこのHbA1cの検査を行うのでしょうか。
というのも、糖尿病は血糖値が異常に高い状態を指しています。
そして、前半で説明したような検査では、その血糖値を直接的に測ることができるのです。
でも実は、血糖値というのは、食事の内容や運動の量、それから検査を受ける前後の生活状況によっても大きく変わります。
つまり、リアルタイムの血糖値だけでは、その人の持つインスリンの分泌能や機能を正確に測ることができないのです。
他方、HbA1c検査というのは、過去1~2カ月の血糖状態を知ることができます。
この期間は、ブドウ糖と結合している赤血球の寿命と関係しています。
ともあれ、HbA1c検査を行えば、その人が本当に糖尿病に罹っているかどうかを診査することが可能になるのです。
このように、糖尿病検査には、幾つもの検査項目がありますが、どれか1つが1回でも基準値を越えたからと言って、即糖尿病であるということでもありせん。
各検査には、それぞれ注意事項等もありますので、詳しくは病院での検査を受ける際にご確認ください。