イメージ画像

乾癬性関節炎とは

乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)は複雑な病気で、皮膚疾患の乾癬の皮膚症状が現れる一方、関節リウマチやリウマトイド因子陰性の脊椎関節症にも似た症状に見舞われます。乾癬症状中心に出る患者さんもいらっしゃいますが、乾癬とリウマチの両方の症状が混ざり合って出るケースもありますし、乾癬性関節炎の関節症状は多岐に渡ります。 異常が現れた場合、皮膚科やリウマチ、皮膚泌尿器科、整形外科が初診に適した科になりますが、あくまでも関節リウマチではなく乾癬の範疇に含まれます。 最初乾癬で皮膚科に通っている内に、関節に異変が生じ整形外科に移るケースもあります。 ちなみに発症率の男女比は同じようなものですが、国内の場合やや男性の発症率が高いとの意見も報告されています。 また乾癬は5歳から15歳前後が好発年齢とされますが、乾癬性関節炎の場合20~50歳と好発年齢が高くなります。 乾癬治療が欠かせませんが、関節の腫れや動かしにくさなど、関節部分の症状だけに注目してしまうと関節リウマチと誤診される恐れも。乾癬性関節炎の専門的 知識を有するドクターなら、乾癬由来の関節炎を疑ってくれる筈ですが・・・。 乾癬患者さんの90%以上が尋常性乾癬で、乾癬性関節炎の発症率は数%程度とごく稀です。

症状

乾癬性関節炎の症状は関節症状、関節外症状、皮膚症状の3つの症状がありますが、代表的な皮膚症状と関節症状の他、全身の倦怠感や握力低下、関節変形によって普段通り生活するのがきつくなることも。

特に怪我をしたわけでもないのに関節に痛みが生じ、腫れたり動かしにくくなる状態が6週間以上続いているようなら、乾癬性関節炎の疑いが濃厚です。素人目には皮膚症状と関節症状を別々に考えてしまいがちですが、同じ乾癬性関節炎による症状です。

関節症状

乾癬性関節炎の関節症状は更に3つのタイプに分類されますが、全体の30%から50%はアキレス腱に痛みが発症し、1つないし少数の関節も痛みます。筋肉の端で関節と連動し、関節を稼働させる役割を担う健の付け根が痛くなる、と言う反応性関節炎の症状に似た健付着炎が出るタイプです。

また、30~50%の割合でリウマチ症状に似通った症状が現れ、このタイプの乾癬性関節炎は全身の関節があちこち痛くなります。

残りの5%は体軸障害タイ プです。背骨や骨盤内の仙腸関節、股や肩の関節に痛みが生じるタイプで、症状は強直性脊椎炎と似ています。 関節症状が強く出る場合リウマチが疑われますが、リウマチでは痛くならない部位が痛むと早めに乾癬性関節炎の診断を下しやすくなります。

全体の25%は遠 位指節間関節に病変が認められますし、5%は指が短くなり力を込められなくなる高度の変形を伴う可能性があるムチランス型です。 どのタイプの関節症状でも、それぞれ30%から35%程度の割合で背骨の痛みや仙腸関節炎に見舞われます。

ただしどのタイプの症状が現れるのかは病型間でも移行しますし、症状は常に変化し続ける可能性があります。

関節外症状

乾癬性関節炎発症後、アキレス腱及び踵の健の付着部は付着部炎症を引き起こしやすく、健や靭帯に症状が現れます。患者さんによっては結膜炎など眼に異常が出現することも。

ごく稀なケースではありますが、その他強直性脊椎炎で引き起こされる心臓の弁膜症である大動脈弁閉鎖不全、眼の内部の炎症で放置すると視力ダウンするぶどう膜炎、肺が硬化する肺線維症などの関節外症状に見舞われる恐れもあります。

皮膚症状

乾癬の皮膚症状が全面的に押し出される乾癬性関節炎患者さんも多く、周りとはっきり境目が分かれる紅斑で皮膚が覆われてしまいます。フケのような銀 白色の鱗屑も高確率で出る筈ですし、頭皮や耳、および仙骨上部の他、アトピー性皮膚炎のように肘や膝の伸側が患部になります。 皮膚症状は1センチから数センチの範囲で現れますが、痒みに耐えかねて指で引っ掻いてしまうと点状に血が滲み出ます。爪に症状が出ると表面がくぼんだり、剥がれそうになる程浮くことも。遠位指節間関節病変(DIP)が認められる爪に20以上のくぼみが見つけられるようなら、乾癬性関節炎の皮膚症状の典型だとされます。

患部

バラエティーに富んだ関節症状が出現する乾癬性関節炎ですが、患者さんのおよそ70%は乾癬の皮膚症状が現れます。残り15%は皮膚症状と関節症状 が同時進行し、更に15%は関節症状メインで病状が進行します。

最初に皮膚症状が出現すると正確な病名が診断しやすく、初期段階で適切な治療に取り組みやすいのですが、子供の場合など皮膚症状が後から出てくる場合他の病気と紛らわしくなります。

乾癬症状は手足など目立つ部位に出るとは限らず、頭皮やおヘソ周り、肛門周辺などの隠れた場所に現れる可能性もあります。 手の関節が患部となればものが掴みにくい、持ちにくくなりますし、足の関節に症状が出ればひどい場合歩行困難に陥り車椅子が必要になる可能性もあります。

重症になると入浴やトイレなどの日常生活を送るのもきつくなってしまいます。乾癬の皮膚症状が出ると見た目にも目立ちますし、皮膚の痒みと関節の痛みに同時に襲われ、ぐっすり眠れない日々が続いて睡眠障害を引き起こす恐れもあります。 全身の痒みとともに関節に痛みがあるため、睡眠が妨げられたり、風呂・トイレなどの 日常的な行動にも不自由を伴う場合があります。

原因

乾癬自体遺伝的背景が発症原因として色濃く考えられていますが、乾癬性関節炎も遺伝要素が否定できません。 実際家族性の発症例は少なくありません。 遺伝学からの分析でも、乾癬性関節炎の関節症状は白血球の遺伝型に分類されるHLAの内特殊なB型と密接に関係しているそうです。

また、症状が似ているものの、遺伝やX線検査所見などからリウマチとは違う病気だとされますが、反応性関節炎とも類似点が多いのが特徴です。溶連菌やブド ウ球菌など、どこにでもあるような珍しくない菌の感染症がきっかけになって発症していると考えられます。

検査と診断

乾癬性関節炎の診断を下す為に、通常X線検査と血液検査がおこなれます。 X線検査でX線写真を撮ると、乾癬性関節炎患者さんの手足と仙腸関節は特徴的な変化が認められます。関節の骨が壊れ削られている部位と、骨が増殖した結果白く厚みを帯びた部分が同時に存在しているのが特徴的です。 こういった現象はリウマチや強直性脊椎炎では見られません。

乾癬性関節炎を発症していると指の関節の隙間が著しく狭くなり、指の先端の関節は鉛筆にキャップをかぶせたような奇妙な変形します。この変形はペンシル・イン・キャップ変形と呼ばれます。 また、血液検査だけでは反応性関節炎と言う病気と区別しにくいところもありますから、複数角度から乾癬性関節炎かどうかチェックし、総合的に判断しなければなりません。

まずは乾癬の症状が確認されること、そして関節炎を特徴とする関節リウマチや変形性関節炎など、他の病気と区別することができれば、乾癬性関節炎の診断が確定されます。 血液沈降速度の亢進、CRP(C反応性タンパク)陽性、血中の尿酸増加、軽い貧血症状など、炎症が認められつつもリウマトイド因子は陰性を指し示す傾向があり、乾癬性関節炎特有の反応とされます。

このページの先頭へ