精神的負担の取り除き方
乾癬を発症してしまった乾癬患者さんにとって、皮膚の発疹や痒み、痛みなどの直接的な身体問題よりも精神的苦痛の方が強い負担となってのしかかって いるようです。
現在世界中に乾癬羅患者は1億2500万人、日本はもちろんアメリカやイギリス、ドイツ、デンマーク、メキシコ、ポルトガル、スウェーデ ン、アイルランド、アラブ首長国連邦など世界中の人間が乾癬に苦しんでいます。
乾癬に関する国際的なアンケートからも、中等度以上の症状を発症している患者さんが自己嫌悪感や通院、入院の精神的、身体的、経済的苦痛などに悩んでいることが分かります。人の眼が気になり外出が苦痛になったり、働くことができたり通学は可能でも他人と親密な関係を持つ勇気が湧いてこなかったり、このまま 治らなかったらどうしよう、と将来の不安から睡眠障害に陥ったりひきこもってしまうケースも珍しくありません。
実際乾癬患者さんの3分の1以上が乾癬症状のせいで仕事の生産性を低下させてしまっているとの報告も。 気にし過ぎ、と言う意見もあるかも知れませんが、実際中等度以上の乾癬症状が人目につく場所に出ると目立つことも確かです。伝染病を疑われ心ない言葉を投げつけられたり、希望する職種につけないことも。
アトピー性皮膚炎同様、乾癬も生命が奪われることのない皮膚疾患ですが、症状が慢性化しやすく著しく外見 を損ねることからも精神的な疲労が蓄積されやすいことが問題です。
伝染病ではないことを伝える
乾癬と言う病気はアトピー性皮膚炎同様、第三者に乾癬する伝染病ではありません。
けれど乾癬はアトピー性皮膚炎ほど症例数が多くなく、珍しい部類の 病気に入るので世間一般の乾癬に対する知識はあまり深くありません。 そのせいで病名を伝えても「それって感染る病気?」と眉をひそめられたりして、患者さんが激しく傷つくケースが珍しくありません。確かに伝染病を疑われた り妙に避けられているような気分にさせられると、二度と人前に立ちたくなくなる気持ちは分かります。 けれど身内に乾癬患者さんがいない方がこの病気に対してよく知らないことは責められませんし、人は知らない病気に対して感染の可能性を疑ったり不安に感じることも当たり前の反応ですよね。
余計な不安を取り除く為にも、学校や職場、近所の方たちと話す機会があれば、乾癬が感染る病気ではないことを伝えましょう。家族や友人の力を借りるのもオ ススメですし、学校なら担任教師に伝えておくと周りにもスムーズに理解して貰いやすくなります。
また、中途半端な知識から批判的な意見をぶつけられるケースも稀にあるようです。確かに乾癬はタバコやアルコール、肥満体型などの内的因子、外的因子で症 状が悪化することもあります。けれどそれを逆手に取り「お酒を飲んでいるから発疹が出るのだ」、「タバコなんか吸うから」、「食べ過ぎのせいだ」などと言われるのは理不尽な気持ちになりますよね。こういった言葉を家族から投げつけられるケースが目立ちますが、喫煙習慣と飲酒習慣があり肥満体型の人間でもほ とんどの方は乾癬を発症していませんし、直接的な原因ではありません。健康と言う観点からもタバコやお酒、暴飲暴食はよろしくありませんが、病気を自分の落ち度と責めることはありませんし、家族の理解が得られないようなら医師に相談しきちんと説明して貰いましょう。 ま
た、乾癬は遺伝要因も指摘されていますが、両親を責めるような言葉、態度も相手を傷つけてしまいます。難しい病気に家族がかかってしまった時、患者さん本人はもちろん、ご家族の精神的負担も相当なものです。必要に応じてご家族も医療機関で精神的なケアを受けることをオススメします。
医療機関を頼る
医療機関は乾癬症状の直接的な治療以外にも頼れる存在です。癌も含め、中々完治しにくく慢性化しやすい病気の場合、精神的な負担も大きくなります。既にストレスで強い疲労を感じていたり、睡眠障害やひきこもり症状などの異変が生じているようなら、病院選びの際心療内科も利用できるような医療機関がオススメです。
実際、長引く病と付き合っていく時、心療内科や精神科、カウンセリングやセラピーなど、心のケアも同時に行う必要があります。頼れる家族がいても、こういった繊細な心のケアに正しく向き合い精神的な負担を取り除いてくれるかどうか、と言う問題はまた別です。
専門家は精神的な問題に専門的に対処してくれます。家族に迷惑をかけて申し訳ない、と苦しんでいる患者さんも大勢いらっしゃいます。自分1人で悩むより、こんなことがあって今こういう状態で、と悩みを打ち明けられる相手を用意することは精神衛生の為にとても重要です。 深刻に悩んでいる時、もうどうしようもない、解決策はない、と自分を追い詰めてしまい他の対処法が眼に入らなくなってしまいます。
心のケアの専門家はそういう状態の患者さんが少しでも楽になるよう、導いてくれます。もちろんドクターやカウンセラーとの相性もありますから、乾癬を治療する病院選び同様、心の ケアを担当してくれる専門家も自分に合う人を探し出しましょう。
完治しない、と諦めない
乾癬は確かに難しい病気で、中々完治しにくい病気です。けれど完治しない、と言うことはありません。
医療機関で「この治療方法で確実に治癒する」と言う治療方法が確立されていないだけで、実際長期間再発を予防し続けることに成功したり、症状をある程度コントロールできるようになっている方は少なくあ りません。
生物学的製剤の存在も大きく、レミナード乾癬などの最新治療は多くの乾癬患者さんの希望の光りとなっています。それに乾癬に効く、とされる自然療法もたくさんあります。様々な治療法、自然療法を探す上で、情報収集は欠かせませんが、完治しない、と言う方向性の情報を信じるよりも、実際に完治したり症状を劇的に改善させた人たちの方法を参考にしましょう。
糖尿病など、乾癬以外にも長いお付き合いになる病気はたくさんあります。即治癒しないことが精神的負担になることは仕方ありませんが、持病の1つ、と割りきる考えも大切です。
当たり前のことですが体調や内部疾患、外見も含め、完璧な人間なんてこの世にいません。治る、と信じていなければどんな治療法、健康 対策も虚しくなります。治癒を信じましょう。全国各地に設立されている乾癬患者さん同士の患者会やイベント、親睦会も精神的ケアに役立つ存在です。 ドクターを招いて懇談会を行っている組織もありますし、何より同じ悩みを共有する人間の存在自体気持ちが楽になるものはありません。新しい治療法や具体的 な副作用の情報交換の場としてもオススメです。どうしても人前に出たくない、と言う時はソーシャルネットワークも大いに利用しましょう。
乾癬関連のコミュ ニティは予想以上にたくさんあります。